突然ですが、考えてみてください。
例えば、あなたの子どもが学校で誰かを棒で叩いたとしましょう。
あなたが親ならどうしますか?
A) 皆に平等に棒を配る
B) 特定の子らにだけ棒を渡し、他の子らを守るように言う
C) 棒を取り上げる
2018年2月14日、世の中がバレンタインで浮かれモードの中、アメリカ・フロリダ州のパークランドの高校、マージョリー・ストーンマン・ダクラス高校で元生徒の男が銃を乱射し、17人が死亡したと報じられました。
そのたった4ヶ月前にはラスベガスでも銃乱射事件が起き、58人が亡くなっています。
2012年12月のコネチカット州における小学校での乱射事件から現在までに、その数なんと1,607件の乱射事件が起きているという報告もあります。
これだけ銃乱射事件が起きて多くの死者が出ても、銃規制の声は「一時的」でいつも話は立ち消えになります。
日本人には理解しがたいこのアメリカの銃規制が進まない理由を3点にまとめてみたので、是非読んでみてください。
◆サクッと読むための目次
アメリカの銃規制が進まない3つの理由
- 人口密度が低いから
- 国論が二極化することを恐れているから
- アメリカ合衆国憲法の縛りがあるから
その①:人口密度が低いから
アメリカは、日本の25倍の国土があるのに対し、人口はたったの2.6倍です。
この数値からどれだけ人口密度が低いかが分かりますね。
もちろん都心部ではそんなことはないのですが、それ以外の土地では、警察や警備会社を頼ったところで、日本や都心部のようにすぐに来てくれることを期待するのは難しいのです。
そうなると「自衛するしかない」という意識が開拓時代から続いてきたことは容易に理解できます。
その②:国論が二極化することを恐れているから
アメリカには大きく分けて、リベラル派(民主党)と保守派(共和党)に分けられます。
北部の人はリベラルな考え方をする人が多く、南部には保守的な考え方の人が多くいます。
リベラルな地域(北部)政治文化と、保守的な地域(南部)の政治文化とは大きく異なるのです。
- リベラル:「伝統よりも個人の選択を重視する」という考え方
- 政府による一定の市場介入を是とする(規制・監査・累進課税・公共事業・環境保護など)
- 社会的な少数派や弱者の権利・支援を是とする(差別是正措置推進)
- 国際社会や他国との協調を是とする(対話や交渉を重んじる)
- 保守:「伝統的な価値観や考え方を大切にする」という考え方
- 自由な市場競争を重んじる(規制緩和・減税・自由貿易の促進など)
- 自治の伝統を重んじる(政府主導の制度などは好まない)
- 国際社会における自国の行動の自由を重んじる(国際機関や他国に左右されない)
リベラルな地域(北部)では銃を規制する声が強く、そもそも銃文化自体が根付いていません。
話は建国当初まで遡りますが、建国者たちは秩序維持を州以下の政府に委ねることにしました。
ニューヨークなどの北東部の大都市では、自治体警察が作られたのに対し、農村部などでは人口密度が低く、警察を整備することは効率的とはいえませんでした。そのため、これらの地域では自警団が発達していったのです。
乱射事件後は銃が売れる
乱射事件が起きると、銃の販売数が増えると言います。
それは「相手に武器があるなら自分もそれと同等かそれ以上のものを手にしていないと自分の身や家族を守れない」という思いがアメリカ人の中にあるからでしょう。
そんなアメリカ人の心情を追ったドキュメンタリー映画があります。
2時間のドキュメンタリーですが、結構サラッと観れるので知識を深めたい方はぜひ。
このドキュメンタリーの中でも言及していますが、アメリカでは国民の不安を煽ることで恩恵を受ける企業が多いのが事実で、それに味をしめて企業はもとより、メディアも政治家も不安を餌に悲しいニュースばかりが日々報道されています。
犯罪自体の数が減っていても、犯罪関連のニュースは劇的に増えているというのです。
これはどこかで利権が動いていると言っても過言ではないです。
ここでいつも出てくるのは、全米ライフル協会(NRA)ですね。
NRAから献金をもらっている政治家も多く、さらには、これまでのNRAの打ってきたキャンペーンは、皮肉にもとても精巧なものが多く、成功してきたと言わざるを得ないのです。
さらには、銃規制賛成の議員に対してはネガティブ・キャンペーンも展開されるため、議員にとっては無視できない団体なのです。
NRAの勢力、影響力の大きさには本当に驚きますが、こういった人たちの異常とも思える程の「銃規制反対」の意志に対峙するとなると、国論が二極化してしまいかねません。
前政権の民主党のオバマ氏ですら、NRAの顔色を伺いながら、及び腰政策しか打ち出せず、それも結局は廃案になっています。
その事実を見ても一筋縄ではいかないことが何となく分かると思います。
その③:アメリカ合衆国憲法の縛りがあるから
先の2点に加えて「アメリカ合衆国憲法修正第2条」の存在があります。
A well regulated militia, being necessary to the security of a free state, the right of the people to keep and bear arms, shall not be infringed
「規律ある民兵は自由な国家の安全保障にとって必要であるから、国民が武器を保持する権利は侵してはならない」
この憲法解釈にも様々な意見がありますが、先で述べたNRAは「憲法で良しとしているのだから、国民から権利を奪ってはならない!」という姿勢を貫いているのです。
銃規制をすると重犯罪が増える?!
銃のない日本に住んでいると、

銃規制をすれば犯罪も減るんじゃないの?なんでそれに反対する人がいるの?
ってなるんですけど、実際に銃規制をすると重犯罪が増えるという意見も出ています。これには一理あります。
銃規制となった場合、その規制に従うのは誰でしょうか?そしてその逆は?
まともな人は規制に従い、悪さをしようとする人は規制に従おうなんてしません。
つまり、銃規制はそういった人たちに有利に働きかねないのです。
長期的に見た場合と、短期的な視点とでは得られる結果が違うのはもっともですが。
最新のアメリカの動き
トランプ氏はこんな提案をしています。
教師の銃携行にボーナスも提案
【ワシントン共同】トランプ米大統領は22日、南部フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件を受けてホワイトハウスで治安当局者らと意見交換し、学校の安全対策のため「高度な訓練」を受けた教師が校内で銃を携行することに前向きな姿勢を改めて示し、武装する教師へのボーナス支給も提案した。
トランプ氏は学校を狙う犯罪者らは「臆病者」で、教師が銃を持てば学校には近づかないと主張。教師の銃携行について有力ロビー団体の全米ライフル協会(NRA)とも協議しているという。
トランプ氏はまた、自動小銃などを購入できる年齢を18歳から21歳に引き上げることに意欲を見せた。出典:47NEWS|©一般社団法人共同通信社
それに対し、フロリダ・パークランドの女性教師Sarahさんはこう発言しています。
Stoneman Douglas teacher Sarah Lerner: “I’m not even given adequate money to buy supplies for my classroom, but now if I choose to carry a gun, a gun will be provided for me and I will be given a bonus?” https://t.co/N25Rhh9rnc pic.twitter.com/gFA6euLOt3
— CNN (@CNN) February 23, 2018
意訳:
「授業で必要な備品を買う十分な資金ももらえないのに、銃を携帯すると言えば銃は準備され、しかもボーナスまで与えられるわけ?だったらそのお金でキャンパス内の警備員を補充するなり、給与に「お金」という形で上乗せして欲しいものです。銃なんか要らない。だったらお金を出して欲しい。」
2月28日の虎ノ門ニュースでのケント・ギルバートさんの解説でトランプ氏の真意が見えた気がしました。
学校は「ガンフリーエリア」。
つまり、銃は持ち込まないでくださいと言っているんですが、逆に捉えれば「ここには銃を持つ人はいませんよ」ということ。
テロリストからしてみれば、「打ち返されることがない!」と取れてしまうんですね…。
それに対抗すべく挙げた提案がこのトランプ氏の発言というものでした。
きちんと訓練した有志の教師に銃を“公にしないで”保持してもらう。そうすれば、テロリストも「誰が銃を持ってるか分からないから、やめておこう」という抑止力になるんじゃないか_。
これがトランプ氏の提案の真意でした。
ただ、Sarahさんのように持ちたくないという教師の方が多いでしょうから、実現は難しそうですね。
加えて、ソーシャルネットなどでは、NRA会員向けに優遇サービスを行っている企業へ、打ち切りを求める投稿が相次いでいるようです。
不買運動などへの発展を懸念し、ユナイテッド航空や金融機関などの複数の大手企業が優遇サービスを終了する方針を表明しています。
まとめ|結局議員は票が欲しい
アメリカの建国の歴史にも「銃」は深く絡んでいて、とんでもなく複雑化してしまっています。
また、アメリカの言う「銃規制」とは日本での「刀狩り」のように、一斉禁止ではなく、あくまでも「規制」を指します。
買うときにバックグラウンドチェック(身辺調査)をしますよーとか、精神疾患者には売れないですよーとかっていう規制のことです。
それですら、NRAの目の敵にされ、ネガティブ・キャンペーンを打たれるというのですから、日本人にはなかなか理解ができない部分だと思います。
どこの国でも同じで本当に呆れますが、議員は票が欲しいのです。
今回記事をまとめていて思ったことは、銃規制より先に整備すべきことがあるのでは?_ということです。
歴史や国民性が絡んでいることは重々承知ですが、隣国のカナダでも銃は持てますが、まったくと言っていいほど状況も考え方も違います。
まずは、国民が銃なしでも安全と思える環境を、国を整えることこそが先決であると思います。
個人としては、核と同様に理想論を言えば「いかなる人も持つべきではない」と考えますが、もしそれを仮に許可するのであれば、やはりしっかりとした規定を設けるべきではないでしょうか。
何事もバランスです。行き過ぎた行為や権利、義務は必ず衝突を生むのです。
倫理的な理想は、NRA自身から規制案が出てくることですが、利益を追い「死んでも銃は渡さない!」とまで豪語するNRAが今後規制案を自ら出すとは思えないですよね…。
それにしてもこれだけの銃犯罪の数を見ても、「銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ」と言い続けるNRA。
アメリカ人はこの狂った状況に自ら疑問を投げかけ、声を上げて欲しいと願うばかりです。
・・この銃規制、どう考えますか?
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それでは今回はこの辺で!
KEI(@kishikawa1126)でした。

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