ここのところ、労働環境の改善は深刻な問題だと感じます。
ニュースで聞く「過労死」という言葉。
英語でも「Karoshi」と言うのを知っていましたか?(参照:BBC NEWS|Copyright © 2018 BBC)
いかに日本の(一部の)労働環境がひどいかが分かりますね。。。
この記事では、現安倍政権が実現に向け推し進めているこの「働き方改革」についてまとめてみました。
◆サクッと読むための目次
働き方改革とは?
安倍首相は2016年9月に「働き方改革実現推進室」を設置しました。
働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。
出典:首相官邸ホームページ|Copyright © Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat.
- 我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
- こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
出典:厚生労働省ホームページ|Copyright © Ministry of Health, Labour and Welfare,
要は、首相官邸ホームページにもある通り「一億総活躍社会」に向けた取り組みということです。
一億総活躍社会とは、「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持し、家庭・職場・地域で誰もが活躍できる社会」を指します。
つまり、「働く」ということに対する政府主導の意識改革とも言えると思います。
働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行い、多様な働き方を選択できる社会を実現し、人々のワーク・ライフ・バランスの実現、生産性の向上を目指し、企業文化や風土を変えようと考えています。
なぜ働き方改革が必要なの?
では、そもそもなぜ働き方改革が必要なのでしょうか?
それには大きく3つの理由があります。
- 「人口の減少」「深刻な少子高齢化」「生産年齢人口の減少」
- 長時間労働が改善されていない
- 雇用形態による格差
理由①:「人口の減少」「深刻な少子高齢化」「生産年齢人口の減少」
まずはこちらの表を見てください。
出典:総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)、厚生労働省「人口動態統計」|Copyright © 2009 Ministry of Internal Affairs and Communications
ここから読み取れることは、「人口の減少」「深刻な高齢化」「生産年齢人口の減少」の3つです。
総務省の国勢調査によると、2015年の人口は1億2,520万人、生産年齢人口は7,592万人でした。
- 年齢別人口のうち労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層
推計では、総人口は、2030年(平成42年)の1億1,662万人を経て、2048年(平成60年)には1億人を割って9,913万人となり、2060年(平成72年)には8,674万人になるものと見込まれています。
生産年齢人口は2010年(平成22年)の63.8%から減少を続け、2017年(平成29年)には60%台を割った後、2060年(平成72)年には50.9%に。
さらには50年後の2060年(平成72年)の高齢化率は39.9%、すなわち2.5人に1人が65歳以上となることが見込まれているんです!!
「今何か手を打っとかなきゃ労働力がなくなる!これじゃあかん!」ってことですね。
補足)労働力確保にはどうすればいい?
では働き手を増やすにはどうしたらいいでしょうか。
まずは、能力・体力的に働ける層に市場に入ってきてもらうこと。
ここには、現状では育児や介護などの両立が難しい人たちも含まれます。
うまく両立してもらうためには、雇用体系なども考えていかなければいけないですよね。
2つめには、出生率を上げて、将来の働き手を増やすこと。
このためには、やっぱり女性が妊娠・育児と仕事を安心して両立できる環境整備が必要ですね。
そして3つめに、労働生産性を上げること_です。
実は、日本の労働生産性は、OECD (Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構) 加盟35ヶ国中20位で、主要先進7ヶ国の中で1970年以降、ずっと最下位が続いているのです。
国内企業の傾向として、残業をすれば成果に関係なく報酬が支払われるため、仕事が遅い人の方がより報酬が多いといった問題があります。
働き手という物理的な分母を増やすことだけではなく、1人1人の生産効率を上げることで限られた働き手でも多くの成果を納品できる体制を作ろうということです。
外国人労働者問題と入管法?外国人技能実習生度との関係は?事の発端とどうしてここまでこじれてしまったのかを紐解いてみました。分かっているようで分からない疑問をまるっとまとめたので、これを読めば明日からのニュースがより分かるようになります!
理由② 長時間労働が改善されていない
冒頭で述べたように、日本では欧州諸国と比較して労働時間が長く、「Karoshi」という英語すら存在しています。
法律で守られてるんじゃないの?
それともみんな違法で長時間労働させてるってこと?
確かに労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない_と定めています。
が!
労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を結び、特別条項を付記すると事実上無制限に働かせることができてしまうのです。
まぁそもそも、36協定ができたのも、通常8時間で「残業もまったくなし、はい終わり!」なんていう仕事の方が少なく、どうしても時には残業や休日出勤が必要になってしまうので、違法にならない例外措置を設けられるように_と作られたものなのです。
ただ、この協定も使い方によっては「事実上無制限」なんてことになってしまうのです。
補足)少子化との関係
実は、少子化とも深く関わり合っています。
出生率の低下には、晩婚や晩産化などの様々な理由が考えられますが、労働時間の長さも1つの要因と考えられています。
女性の労働参加が進めば、フルタイムで働く女性が増える。すると、年齢を重ねるにつれ管理職などの責務が増えます。
必然的に残業も出てきそうですね。
また、子どもができて、保育園に入れられたとしても問題は残ります。
夫婦共働きの場合には、いずれかは定時に切り上げて、子どもを迎えに行かなければなりません。
定時退社や有給消化、さらには産休・育休の「取りやすさ」について、自分の勤務先はどうでしょうか?
少子高齢化は人口、つまり実質的な「数」という側面に加え、長時間労働を改善しないことには少子化を進行させかねない_という側面も持っているのです。
よって、日本は今後、人口減少と少子高齢化の急速な進展が現実のものとなり、この中で新たな経済成長に向けた取り組みが不可欠_というわけなのです。
長時間労働の是正にはどうすればいい?
我が国は欧州諸国と比較して労働時間が長く、この20年間フルタイム労働者の労働時間はほぼ横ばい。仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためには、長時間労働の是正が必要。このためには、いわゆる36協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を具体的に定める法改正が不可欠。
首相官邸ホームページ|Copyright © Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat.
2013年には国連から長時間労働の事実に対し、是正勧告も受けています。
それほど「目に余る」状況であることがわかりますね。
先述した通り、36協定も使い方によっては「事実上労働時間上限なし」なんてことになっています。
今回の改革では「いわゆる36協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を具体的に定める法改正」を検討しているのです。
まずベースとして「週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とする」。
そのベースを維持したうえで、特例策を別途設け、臨時的な特別な事情にも対応できるようにする。
これは労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間とするものです。
理由③ 雇用形態による格差
日本の非正規雇用労働者は、全雇用者の4割を占めています。
不本意で非正規雇用となっている人は減っているものの、女性の中には妊娠・育児などの理由から非正規雇用を選択する人も多いです。
非正規社員の待遇は、正社員の時給換算賃金の約6割に留まっています。
欧州では約8割ですので、格差は激しいと言えますね。
格差を埋めるにはどうしたらいい?
同一労働同一賃金の導入は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである
首相官邸ホームページ|Copyright © Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat.
つまり、「正規と非正規雇用の間の不合理な待遇差の解消」を指します。
もちろん能力に明らかな差があり、それで差別化をしているのであれば問題ありませんが、同じ仕事(量・質)をこなしている場合、つまり同じ付加価値をもたらす人には同じ待遇(賃金や福利厚生)を与えるべき_という考え方です。
アベノミクスの三本の矢の政策によって、デフレではないという状況を作り出す中で、企業収益は過去最高となっている。過去最高の企業収益を継続的に賃上げに確実につなげ、近年低下傾向にある労働分配率を上昇させ、経済の好循環をさらに確実にすることにより総雇用者所得を増加させていく。
首相官邸ホームページ|Copyright © Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat.
この考え方のベースにあるのは、「デフレの解消」です。
企業収益が上がっているにも関わらず日本ではしばらく賃金が上がっていないのです。
賃金が上がらないと節約志向は打破できず、デフレからの脱却は難しくなります。
消費を促進し、インフレに転向させるためにも、全体の4割を占める非正規雇用者の待遇改善は必須なのです。
《UPDATE》2018年1月26日:代表質問にて野党反発
1月26日の代表質問で、野党は「残業100時間」さらには一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入を批判、反対しました。
野党の主張では、「月100時間未満」は「過労死ライン」の水準に近く、「過労死容認法案」になりかねない_というもの。
高プロに対しては、労働者ではなく使用者にしかメリットがない_と。
安倍首相の答弁では、今回の改革は労働基準法制定以来70年ぶりの大改革であり、過労死の悲劇を繰り返さないためにも、36協定でも超えられない限度を制定することを強調しました。
高プロに対しても、意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするもので、残業代ゼロ制度との批判は当たらないと反論しました。
2019年4月施行を目指していましたが、国会解散などもあり、審議が遅れ、企業側の準備期間が十分に確保できない可能性が出てきたことから、施行日を遅らせることも検討しているようです。
まとめ|「能力」で評価できる文化が広がるといいよね
高プロですが、わたしの個人的見解では問題ないという意見です。
まず第一に対象となるのは、「平均給与額の3倍(1,075万円以上)を相当程度上回る労働者」であり、且つ一部の業種のみです。
まずこの時点で「仕事のできる人」であることは容易に想像できると思います。
次に、導入のメリットとしては、真っ先に「労働生産性の向上」があります。
現状の国内企業の傾向として、残業をすれば成果に関係なく報酬が支払われるため、仕事が遅い人の方がより報酬が多いといった問題があります。
しかし、高プロでは、労働時間で報酬が左右されるわけではないので、短時間でやることを終わらせる!というモチベーションが労働生産性に繋がります。
また、日本の「終わっても退社時間まで帰れない」という風習も断ち切れると思います。
高プロでは、出社や退社の時間が自由に決められるため、ワークライフバランスも実現できるようになると思います。
企業側のメリットとしてはもちろん「無駄な残業代は不要」ということでしょうね。
とは言え、懸念点もあることはあります。
野党の言うように一部業種によっては残業が横行する可能性も否定できません。
さらには、成果に対する報酬の決め方が難しいという難点もあります。
もちろん1つを変えるならばできるだけ多くを改善_というのは納得できますが、まず是正すべきは長時間労働だと思います。
これは長時間労働を強いられている側はもちろんですが、能力が低いが故に残業をせざるを得ない人もいると思うのです。
こういった人たちを「労働時間」で評価するのではなく、そして年功序列や勤続年数などの概念を取っ払い、しっかりと「能力」で評価できる文化を作っていって欲しいと思います。
企業単位の努力が大変必要になってくると思いますが、カナダにいて、この辺りはやっぱり進んでいるなと思うこともあります。
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それでは今回はこの辺で!
KEI(@kishikawa1126)でした。
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